高血圧
日本では40歳以上の2人に1人が高血圧です。高血圧はほとんどの場合、症状がありません。しかし治療せずに放置すると、心筋梗塞や脳卒中など命に関わる病気の原因になります。これらの病気は日本人の死因の上位(2位、3位)を占めています。高血圧を治療することは、致命的な病気の予防につながります。
高血圧について
血圧とは、「血管の中を流れる血液が、血管の壁に与える圧力」のことです。
血圧が高い状態が続く場合を高血圧といいます。診察室では、上の血圧(収縮期血圧)が140以上、または下の血圧(拡張期血圧)が90以上、家庭では上の血圧(収縮期血圧)が135以上、または下の血圧(拡張期血圧)が85 以上が高血圧です。
高血圧では、動脈に負担がかかり、動脈の内壁が傷ついたり柔軟性がなくなって硬くなります(動脈硬化)。高血圧を放置すると動脈硬化は進行し、心臓では心筋梗塞・狭心症・心不全、脳では脳血管障害(脳卒中)や認知症、腎臓では腎不全などの病気につながります。このため高血圧は、喫煙と並んで、日本人の死亡に最も強く影響しています。
高血圧の原因
高血圧は、原因によって 本態性高血圧(一次性高血圧)と二次性高血圧に分けられます。
本態性高血圧
本態性高血圧とは、特に原因無く血圧が高い状態です。日本人の高血圧の90%は本態性高血圧といわれています。
以下のような要因によって、血圧はさらに上昇します。
- 塩分の取り過ぎ・・ 日本人の高血圧に最も強く影響しています
- 肥満 ・・若年~中年の高血圧に影響しています。
- 運動不足
- ストレス、過労
- 加齢
- 遺伝的要因
二次性高血圧
二次性高血圧は、甲状腺や副腎の病気、睡眠時無呼吸症候群など、他の病気のために、高血圧を起こすものです。若い方の高血圧では頻度が高く、原因となる病気の治療が必要です。当院でも必要な場合、二次性高血圧の検査や治療を行います。
高血圧の治療
高血圧の治療は「生活習慣の改善」と「薬物治療」の2つによって行います。
生活習慣の改善
(1)減塩しましょう
(2)肥満の方は、減量しましょう。
(3)適度の運動(有酸素運動)をしましょう。
(4) 禁煙(受動喫煙の防止)しましょう。
(5)アルコールは、ほどほどに。
(6)野菜が多く、コレステロールや飽和脂肪酸は少ない食事にしましょう(腎障害や糖尿病のある方は制限がありますので個別に御説明します)
<その他の注意事項>
急激な温度変化は血圧を変動させます。寒いと血圧が上昇しますから、冬は暖房を適切に使い部屋(特に、トイレ・浴室・脱衣所)を暖かくしましょう。またお風呂はお湯が熱すぎないよう(40度以下)にして、冷水浴やサウナなどは避けてください。
薬物治療
生活習慣の改善で血圧が下がらない場合は、「降圧薬(こうあつやく)」という薬を使って血圧をさげます。降圧薬にはとても多くの種類がありますが、患者さんの状態にあわせて種類や量を調整いたします。
「血圧の薬は一生飲み続けなければいけないから、まだ飲みたくない」とお考えの方も多いですが、薬を飲まずに高血圧を放置する間に、脳梗塞や心筋梗塞をおこしてしまったら、取り返しがつかないですし、「薬を飲んでおけばよかった」と後悔するのはとても残念な事です。降圧薬で治療した人達は治療しなかった人達より、脳卒中や心臓病の確率、さらに全体の死亡率も低いことがわかっています。また生活習慣を改善して血圧が低くなれば、降圧剤を減量・中止する事も可能です。
降圧薬を始める時は、数か月かけて少しずつ血圧を下げていきます。急に血圧を下げると、倦怠感を感じたり、脳梗塞の危険がやや高くなるからです。このため最初のうちは、「きちんと薬を飲んでも血圧が正常にならない」状態になります。しかし、そこで通院をやめたり薬を中断したりすると、治療前の危険な状態に戻ってしまいます。降圧剤について不安や御質問がある際は、お気軽に担当医におたずね下さい。